梅の花を見て楽しむことは、観梅(かんばい)、梅見などと呼ばれてきました。
ここでは、水戸の梅まつりにおける梅の楽しみ方を紹介します。
目 次
偕楽園の梅の特徴と時期ごとの楽しみ方
偕楽園には、約100品種3,000本の梅が植えられています。
ひとえに梅の花と言っても、色や形は様々。
可憐に咲く白梅に艶やかな紅梅、一本の木に複数の色の花をつける咲き分けの梅など、品種によってまったく異なる姿を見せてくれます。
また、開花時期もそれぞれ異なることから、早咲き・中咲き・遅咲きと、長い期間に渡って観梅を楽しめることも特徴と言えます。
早咲き(開花目安:1月中旬~2月) |
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八重冬至、白難波、八重寒紅 など |
中咲き(開花目安:2月~3月上旬) |
月宮殿、月影、見驚 など |
遅咲き(開花目安:3月上旬~下旬) |
白加賀、黒田、思いのまま(輪違い) など |
まだ寒いなか咲き始めた梅の花を一輪一輪探しながら楽しむ「探梅」、美しく咲き誇る梅の花を観賞する「賞梅」、零れる梅の花を惜しみながら眺める「送梅」というように、時期に応じた楽しみ方も知られています。
また、「水戸の梅花道」という偕楽園ならではの風流な梅の愛で方もあります。
令和6(2024)年には、偕楽園の梅を含む130品種の梅が、(公社)日本植物園協会の園芸文化遺産であるナショナルコレクション「水戸のウメ」に認定されるなど、高く評価されています。
「水戸の六名木」について
偕楽園内には、普通の梅の木とは異なる六角形の柵で囲われた梅が何本か植えられています。
それらは「水戸の六名木」と呼ばれています。
水戸の六名木とは、昭和7(1932)年から9年にかけて、偕楽園と弘道館公園内にあるすべての梅の品種の調査・研究を行い、その中でも花の形や香り、色などが特に優れている6つの品種を選出したものです。
水戸の六名木
【烈公梅】野梅系・野梅性
開花目安:1月下旬~2月下旬
薄紅色の大輪、一重咲きで、丸い花弁の一枚一枚が離れています。
端正な花弁の具合と力強いおしべの具合が実に上品な品種です。
水戸にしかない品種と言うことで、水戸藩第9代藩主徳川斉昭公の諡号「烈公」にちなんで名付けられました。
【白難波】野梅系・難波性
開花目安:1月下旬~2月下旬
やや早咲きの白色中輪です。
ほころびたときの微かな淡紅色が開花した後も花の外側に残ります。
【月影】野梅系・青軸性
開花目安:2月中旬~3月上旬
青白い花色ですが、丸くて厚い花弁、おしべの豪華さが全体の雰囲気を落ちついたものにしています。
花の輪郭が美しいことは全品種の中でも有数のもの。
香りも強く、梅の原型を見るかのようです。
【江南所無】豊後系・杏性
開花目安:3月上旬~4月上旬
明るい紅色の大輪。花弁は厚く、おしべを抱え込むように咲きます。
中国の江南地方にもこれ以上の梅はないと言う意味で名付けられたようです。
徳川光圀公の師であった、中国の儒学者・朱舜水が日本にもたらした品種と言われています。
【柳川枝垂】野梅系・野梅性
開花目安:2月上旬~3月上旬
淡紅色中輪の一重咲きです。
つぼみの間は濃紅色の萼に包まれていますが、開花するとがくは反り返ってしまい、中からうっすらと白く縁取りされたやや濃い目の淡紅色の花弁が現れます。
【虎の尾】野梅系・難波性
開花目安:2月上旬~3月上旬
八重中輪で、赤紅色のがくを有します。
つぼみの開き始めは薄紅色でやや尖っていますが、開花後は白色となります。
おしべは短く、2本以上あるものが多く見られます。若いさやは黄緑色。
水戸の梅花道
ここでは、梅を楽しむための、水戸流の作法「水戸の梅花道」を紹介しています。
普段と違う梅の風流な楽しみ方をご堪能ください。
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茶道・華道とそれぞれ、その道にはお作法がございます。
梅のすべてを深く観賞していただくため、水戸観光コンベンション協会が薦める、究極の作法を紹介いたします。
春に魁咲く梅、春の兆しを探しに。偕楽園だからこその味わいが堪能できることでしょう。
その一
門前で居づまいを正し、心を静める。
その二
まだ朝露の残る園内に足を踏み入れる。
その三
梅林の全体をゆっくり目で追う。そして木立の小道を歩き、その息吹に触れる。
その四
枝先に目を落とし、一輪一輪を愛でる。100品種の実に美しい表情を見極める。
その五
古木を探す。地面を這うような幹、優雅な曲線をえがく幹、黒く耀く樹肌、臥竜梅・鉄幹と呼ばれるもので、時の流れ、生の鼓動に出会える。
その六
そして、そっと清楚な花々に近づき、深呼吸……。馥郁とした香りが体の隅々に流れ、至福の喜びを味わう。
その七
門を出、心静かに時を楽しむ。
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緑深い木立に囲まれた偕楽園内の梅は、水戸藩第9代藩主徳川斉昭公が全国の藩から収集したものであり、貴重な品種も数多く植えられています。
これらは、多種にわたるその特性から、早咲き・中咲き・遅咲きと、開花時期にも幅があるため、長期間にわたり観梅が楽しめることが特徴です。
蕾から全開するまでの花の変化を楽しむ、探梅・賞梅・送梅という風雅な言葉もあります。
芳香、100品種の花の表情、色合いの相違等を、一輪一輪よくご覧ください。
花の美しさに、驚きと喜びで心が湧く事でしょう。
また、開園当時からの年数を経た古木の幹が、風雪に耐え、苔を宿しながら樹勢を広げる姿に、生命の力強さを感じることが出来ることでしょう。
花は、雨上がりの早朝、朝露が残るときが一段と香ると言われております。
木々に囲まれた偕楽園は空気も浄化され、格別の「梅」を味わうことが出来ることでしょう。
もうひとつの楽しみ方として、昭和初期に、数多い品種の中から花の形・香り・色等が特に優れている6品種の梅を選定した「水戸の六名木」をご覧いただくことをお薦めします。
また、偕楽園は、訪れる人に憩い、安らぎを与える場所として、環境省選定の「かおり風景100選」に選定されております。